日本画の巨匠を観に行く

近代美人画の巨匠と言えば、「西の上村松園、東の鏑木清方」と言われているそうだけど、ラッキーなことに、この二人の展覧会を両方やっていた。

病み上がりで心が弱っている私は、押し出しの強い西洋絵画とか、どんどん問題提起してくるモダンアートとかは、見ているとなんだかつらいので、今回は日本画。

 

まず広尾にある山種美術館。

開館55周年記念「上村松園・上村松篁-美人画と花鳥画の世界-」。

ほとんどの作品が山種美術館所蔵なのだ(驚)、借り物じゃなくて。

 

松園の作品は、とにかく美しく、上品な色気がある。人物の表情もしぐさも、髪の毛も髪飾りも、着物の色も柄も、隅々まで精緻に描かれている。

どんどん近寄って見てしまう。

そしていつまでも見ていられる。

嬉しいことに、「娘」が撮影可となっていたので、載せておく。

針に糸を通そうとしている「娘」の真剣な表情とか、愛らしい口元とか、ほんのり色づいた指先とか、もう萌萌である。

私の好きな「牡丹雪」についても(写真なし)。この作品は、雪だけの空間が広く取られていて、構図的には一瞬「え?」って思うのだが、それがかえって芝居の一場面を切り取っているようで、すごいんである。静止画なのに動画な感じ。

 

帰りに、1階の喫茶で今回の展覧会をモチーフにした和菓子をいただきました。

「誰が袖」というのを選んだのだが、和菓子も美しく、美味しかった。

 

そして竹橋にある東京国立近代美術館。

没後50年「鏑木清方展」。

清方のほうは、美人画というだけでなく、その時代の風俗というか、庶民の生活までをも描いている。

人物にしてもその性格まで伺えるというものだ。

お札で見る樋口一葉は、無機質な宇宙人みたいな感じだが、清方の描いた樋口一葉は、意志が強そうで、お札よりちょっと美人だった。

目玉となっていた「築地明石町」「新富町」「浜町河岸」はやはり見ごたえがあって、この3枚が同時に見られるのは嬉しいことだ。

歌舞伎(特に道成寺)を題材にした作品にも心惹かれた。

 

今回二人に共通して思ったのは、60歳を過ぎてから、素晴らしい作品をたくさん描いているということだった。

円熟期に入り、なおかつ精神的に若くないと、このような色気のある作品は描けないだろうと思う。